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澤田みどり氏・吉長成恭氏*園芸療法・園芸福祉のスペシャル対談に行ってきました

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2月3日(土)川越で開催された園芸療法と園芸福祉に関する講演会に行ってきました。

主宰は「NPO法人土と風の舎」。
活動15周年を記念して、澤田みどり氏と吉長成恭氏を迎えてのイベントでした。

プロフィール
澤田みどり氏
恵泉女学園大学人間社会学部 特任准教授
NPO法人日本園芸療法研修会 代表理事

吉長成恭氏
県立広島大学大学院(MBA) 客員教授
NPO法人日本園芸福祉普及協会 理事長

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始まりました。

会場には実際に園芸福祉や園芸療法に携わっている方々、土と風の舎でボランティア活動をしている方々などが参加していました。

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まずは、澤田さんの講演「園芸療法を実践するために」。

澤田みどりさんは1989年日本人として初めて園芸療法を学ぶためにアメリカへ留学し、以後日本において園芸療法の実践とネットワークづくりを第一線ですすめてきた方です。

そもそも、園芸療法と園芸福祉の違いって。。

何度かこういった講演会やイベントに参加させていただいているのですが、何度聞いてもその違いがよく理解できず。。
でも、今回「あ、なるほど!」って感じで腑に落ちました。

澤田さんによると、園芸療法とは人を主体とした植物による心身のリハビリテーション。

リハビリ、リハビリ、って普段からよく使う言葉ですがラテン語でre(再び)habiris(再び)という意味で、健康を害した人の社会復帰や障がい者がその人らしく生きていけるような環境を作っていくことを指します。

園芸療法は、病や障がいなど何らかの課題を抱える人が園芸活動を通して社会生活を再び営めるよう支援するものです。

たとえば、植物を見に出かけることによって、季節を体感したり、様々な生き物と出会ったり、香りや色や形などを刺激されたり。

気温、風、光、植物の成長や鳥のさえずりなどなど、ちょっと外へ出れば、毎日違った変化に気づく。
それが安心感ややすらぎや開放感になり、なにより五感を取り戻すことができます。

そうした自然と触れ合う毎日がリハビリになり、そのツールとして植物を用いるというわけです。

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これはレイズドベッドといって、車いすの人や立ってしか作業ができない人でも園芸を楽しめるよう考案された花壇です。
座ることもできるし、地面にしゃがまないと植物を育てる楽しみが味わえないという問題をハード部分で解決しています。

こうした取り組みによって生活不活発病や認知予防などに役立っているそうです。

しかし、課題も。

園芸療法を実践してきて25年が過ぎた今、園芸療法士のニーズはかなり増えているのですが、まだまだ仕事として生活をしていくほどではない。

当初ボランティア活動から始まり、徐々に仕事として報酬も受け取ることができるようになったとはいえそれで生活できるかというと厳しいものがあるというのは、介護の仕事などと共通した悩みかもしれません。

とはいえ、東日本大震災後、南三陸町では園芸療法プログラムによる活動を7年目、2017年からは横浜のベルガーデン水曜クラブにて横浜市の介護予防生活支援サービスをスタートなど、いきなり大きく広がるわけではありませんが地域に根差していきながら確実に園芸療法による生活支援システムが広がっています。

澤田さんのお話で印象深かったのは「3.11の直後はいろんな団体が支援活動をしていましたが今は少なくなっています。私たちの活動は震災後からずっと小さな要望にも地道に応えながらやっています。しかし、だからこそ信頼関係を築くことができているので、継続の大変さと大切さを実感しています」ということ。

地道な継続。簡単なようでこれが一番むつかしく重要なことですよね。

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吉長先生のお話は、「園芸福祉活動 しあわせ度と要介護度、平均寿命の関係」というテーマでした。

福祉とは「福」=welfare=費用・制度、「祉」=welbing=日常の幸せを感じるしあわせ、という言葉の組み合わせです。
また、「療法」=細かく分けて取り去ること、「癒し」=心のしこりが取れて軽くなること。

ひとつひとつの言葉の意味を考えたことがなかったのですが、言われてみれば園芸福祉の意味がわかります。

福祉や癒しは様々なところで用いられていますが、園芸、植物、という幅広い対象に受け入れられるものを介して取り組むということに意味があるということなんですね。

定期的な園芸活動をしている人で、しかも多世代間で園芸活動をしている人ほど人格的成長、人生における目的、が伸びてくるそう。
要するにwelbing=しあわせ度がふえるということなんでしょう。

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このグラフ、わかりますか?

横軸が所得額、縦軸が幸福度です。

日本は所得はまあまあ高いけど、幸福度はウズベキスタンやマレーシアより低いんですね。
所得額はかなり違うけどヨルダンと同じくらいの幸福度か。

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とはいえ、このグラフでわかるように日本では1978年から徐々に物の豊かさよりも心の豊かさを重視する人が増えてきています。

インフラが整って、物も溢れるくらい目にしたり所有したりできるようになると、目に見えない心の部分を大切にしたいという気持ち、理解できます。

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さらに細かく見ていくと、高齢者の要介護発生リスクってどんなだろう。

このグラフはシカゴの方を平均45年間追跡調査したものですが、人生の目的がある人は要介護の発生率がなんと40%以下であるという内容です。
40%以下って。。

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しかもこのグラフでは、生きがいを持っている人はもっていない人に比べて生存率が倍以上!

よく、太く短く生きるから食事も生活なんてどうでもいいんだ、とか、そんなに長生きしても仕方がないじゃないか、とか、今のことだけに精いっぱいで、とかって耳にします。

それ、自分で寿命がわかっていればさもありなんですが、いつまで生きるかわからないんだったら健康で幸せなほうがいいとおもうんですが。

となると、やはり人生の目的を持つことや生きがいを見出すということは無意味ではない。むしろ、とっても大切だってことですね。

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この講演会を教えてくれたのは、以前広島取材のときにお世話になった進藤さんでした。

2014年の「花きの振興に関する法律」が制定されて以来、広島では花活というイノベーション事業が推進されていて、その活動は以前もブログにて紹介させていただきました。

「花や緑によるQOL改善セミナーを花屋視点で考察~売ることだけでなく伝えることが大切~」

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生産者、小売り、流通、園芸福祉と、異なるポジションの方々が連携している花活ですが、なかでも独自の器「イレカエール」を開発して園芸福祉に役立てています。

これは、高齢者や障がい者が気楽に植物を楽しむために、あらかじめ花の長さや挿す位置や苗の場所を決めているというもの。
これによってあきらめることなく出来上がった喜びや達成感、植物に触れる癒しを体感することができるのです。

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かといって、みんな同じものを完成させるのではなく、器の傾け方や花やグリーンの配置によって全く違ったものが出来上がるので満足感もひとしお。
いい笑顔です。

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園芸療法、園芸福祉に関する本が並べられていて、みんな興味深く見ていました。

進藤さんと篠崎容子さんがが訳して吉長先生が監訳した「植物と人間の絆」ももちろんありましたよ^^
ちょうど読んでいる方がいたので写真には写っていませんが。

「オススメ*「植物と人間の絆」~思った以上に植物ってすごい~」

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澤田先生が「人間はもともと緑の中で生きていたのでそこにいると安心感が持てる。だが、自然から離れることによってひずみが生じ、心身の不調を抱えるようになった」と話していましたが、確かにそうかもしれません。

「若い人の中には高層マンションで生まれ育ち、土も虫も知らずに育っている人がいます。
自然から離れることはとても不自然なので、花と緑にかかわる場所をもっと増やしていく努力が必要です。」とも。

司会の土と風の舎代表の方曰く、13歳のハローワークという中高生の未来のためのサイトでは人気の職業100のなか、植物や園芸にかかわる職種は67位のフラワーデザイナーのみ。

そうなんだ。。
まだまだ認知が足りないんですね。
それに、接する場や生活環境も影響大きそうだな。

ちなみに、30年ほど前は小学生の女の子のあこがれの職業は1位が花屋さんでしたね。

とはいえ、植物にかかわることというのは生きていくうえで決して避けられないことですから、職業や業種で分けて考えるというよりも生きていくうえで幸せになるための知識として知ってもらいたいです。

今、花の流通産業の中で花の癒し効果が認知されてきています。
花屋さんの中にも園芸福祉士の資格を持つ人が増えてきているそうです。
小売りという立場から、地域密着店として、花で住民をケアするというビジネスモデルのシフトチェンジが始まるかもしれません。

いやいや、それだけじゃ店を維持することも生活することも無理ですよ、と感じるかもしれませんが、現在園芸福祉士の賃金計算は全国都道府県の最低雇用賃金の2倍を計上できるようになったそうです。

また、吉長先生はダブルライセンスも提唱しています。
要するに、理学療法士や保育士の資格を取るときに一緒に園芸福祉士の資格も取れるようにするということです。

いくら必要で重要で大切なものといっていても、ボランティアだけに頼って現実的に成り立たなければちょっとつらい。
もちろんまだまだそれだけで生活できる方は少ないと思いますが、いずれはそれもできるようになれば職業としての認知度がもっとアップします。

今つらい人のための園芸療法、もっとしあわせ度を感じる人を増やすための園芸福祉。
どちらも植物が大きな役割を果たします。

「植物が成長するとき人はその美しい植物よりももっと美し人に成長している」byチャールズ・A・ルイス(植物と人間の絆著者)

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